第107回第2言語習得研究会(関東)

 日時: 2021619()  13:00-17:00

 場所: オンライン(Zoom 

 参加申し込みが必要

 参加費:2000

注)今回の参加費をお支払いいただくことで、

今年度(6月、10月、2月)の研究会参加が可能となります。

 参加申込方法

1)以下の口座に今年度会費2000円を振り込む

ゆうちょ銀行 

記号 10180-2

番号 76641991

名前 ダイニゲンゴシュウトクケンキュウカイ(カントウ)

 

他金融機関からの入金

店名 〇一八(ゼロイチハチ)

店番 018

預金種目 普通預金

口座番号 7664199

恐れ入りますが振込手数料等が発生する場合は振込者がご負担ください。

 

2)以下のURLに入り、参加申し込みを完了する

申込締切日 : 617日(木)正午
参加希望者多数の場合は募集締め切り日よりも早く応募を締め切る場合があります。)

URLhttps://forms.gle/4fsPA7picq4STQgi6

 

3)振込確認後ご記入いただいたメールアドレスに研究会のZoomIDPWと配布資料を送付。

送付予定: 618日(金)夜までに

注)参加に必要な環境(Zoomアカウント、PCインターネット環境など)は各自ご準備ください。

 

 プログラム

【開会の挨拶】13:00-13:05

 

【研究発表】13:05-15:15

1. 13:05-13:35

田敬雲(デン ケイウン)   お茶の水女子大学 大学院生

「中国語を母語とする日本語学習者の主節・連体修飾節におけるテンス・アスペクトの使用傾向」

 

2. 13:35-14:05

王艶(オウ エン)   お茶の水女子大学 大学院生

接触場面における日本語母語話者と中国人日本語学習者による不同意表明 -フェイスの観点から-

 

3. 14:15-14:45

沈倍宇(チン バイウ) 昭和女子大学 大学院生

「自然な日本語音声テキストの聴解過程:スクリプトの有無による比較を通して」

 

4. 14:45-15:15

プープィンピュ   昭和女子大学 大学院生

「タスク設定による聴解過程の異なり-多肢選択式タスクと記述式タスクの比較から-」

  

【講演】15:30-17:00

横山紀子先生(昭和女子大学

4技能のシンデレラを救え!第2言語聴解能力の習得・評価・指導をめぐる研究

 

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要旨

【研究発表】

1. 田 敬雲(デン ケイウン)

「中国語を母語とする日本語学習者の主節・連体修飾節におけるテンス・アスペクトの使用傾向」

本研究では、多言語母語の日本語学習者横断コーパス(I-JAS)の絵描写、ストーリーライティング1ストーリライティング2のタスクを用い、中国語を母語とする上級日本語学習者(CJL)と日本語母語話者(NS)の主節・連体修飾節におけるテンス・アスペクト形式と動詞タイプの結びつきの傾向を研究した。その結果、CJLは主節・連体修飾節において、「到達動詞+ル・タ」、「活動動詞+テイル・テイタ」の使用傾向があり、位置、テンス形式による影響が見られず、アスペクト仮説の予測と一致した。また、NSは主節において「状態動詞+ル」「到達動詞+タ・テイル」「活動動詞+テイタ」の結果でテンスによる影響を示した。さらに、NSは両位置による異なる使用傾向を示した。以上のことから、上級レベルのCJLもアスペクト仮説による発達前半の使用傾向が見られた。テンス・アスペクトの習得を検討する際に、主節・連体修飾節における使用を区別して扱う必要があると考えられる。

 

2. 王艶(オウ エン)   

接触場面における日本語母語話者と中国人日本語学習者による不同意表明 -フェイスの観点から-

本稿は、初対面の日本人母語話者(JNSと中国人日本語学習者(CJL)を対象とし、不同意表明の仕方とフェイスへの配慮様相について考察した。まず、不同意表明の仕方について、JNSはより間接的に不同意を表明し、より豊富な手段を用いて不同意の表明を緩和し、さらに感想を述べることで相手からの理解や共感を得ることを目指している。一方で、CJLはより直接的に不同意を表明し、事実や情報を提示し、積極的に見解を表明することで相手を説得しようとする傾向がある。フェイスに関しては、聞き手のフェイスだけではなく、話し手のフェイス、双方のフェイスへの配慮も観察された。JNSは相手のネガティブ・フェイス、CJLは相手のポジティブ・フェイスへの配慮がより多く観察された。CJLは圧倒的にポジティブ・フェイスへの配慮が多いのに対して、JNSはポジティブ・フェイスとネガティブ・フェイスへの配慮の均衡が比較的取れていることも分かった。

 

3. 沈倍宇(チン バイウ) 

「自然な日本語音声テキストの聴解過程:スクリプトの有無による比較を通して」

聴解の教材やテストで用いられる調整された音声テキストに対して、自然な音声の聴解過程にはどのような特徴があるのだろうか。中国人日本語学習者40名を対象に、依頼を断る場面において、スクリプト無の自然なテキストとスクリプト有のテキストを各20人ずつに聴かせ、それぞれ音声認知、言語解析、発話意図理解のどのレベルで問題が生じているか、生じた問題について何を手かがりにどのように理解を構築しているか、回想インタビューによるプロトコルを分析した。分析の結果、ついては、スクリプト無のテキストを聴いた被験者は主に音声認知で問題が生じていたのに対し、スクリプト有の被験者は言語解析で問題が生じていた。については、発話意図を理解する手がかりとして、スクリプト無の被験者は談話、語用論、先行知識をより多く使用するのに対し、スクリプト有の被験者は言語知識をより多く使用することがわかった。

 

4. プープィンピュ  

「タスク設定による聴解過程の異なり-多肢選択式タスクと記述式タスクの比較から-」

本研究は、タスク設定による学習者の聴解過程の異なりを明らかにすることを目的とし、在日ミャンマー人日本語学習者10名を対象に、多肢選択式タスクと記述式タスクを実施した。その際、同じテキストに対して両タスクを用意し、2グループに分けたグループ間で両タスクの聴解過程を比較できるような設計をした。回想法により収集したプロトコルデータに基づいて学習者が使用した知識、直面した問題及び解決方法を整理し、両タスクにおける聴解過程を検討した。分析の結果、学習者は、いずれのタスクでも、主に語彙的知識及び構文的知識といった言語知識を使用していた。一方、多肢選択式タスクでは、正答の選択肢を選ぶことに集中し、選択肢と照合して理解を構築していたのに対し、記述式タスクでは、言語知識の他、語用論的知識及び世界知識などを相互に組み合わせながら、テキストによって伝達される話し手の意図を理解しようとしていたことが明らかになった。

 

【講演】

横山紀子先生

4技能のシンデレラを救え!第2言語聴解能力の習得・評価・指導をめぐる研究

聴解は、習得の源泉となる重要な技能であるにも関わらず最も研究が遅れているという現実を受け、また今後を担う若い研究者をこの領域に誘う気持ちを込めて、演題を上記のようにしました。講演では、聴解を巡る代表的な研究課題に沿って諸研究を概観し、これまでの主要な研究結果をまとめます。具体的には、以下の4の課題です。(1)聴き手はどのように聴いているか、(2)効果的な聴き手はどのように聴いているか(どのようなストラテジーを使っているか)、(3)聴解ストラテジーは指導可能か、(4)聴解能力はどのように/どこまで評価できるか。また、講演者が特に興味深いと考える研究をいくつか具体的に紹介し、その研究意義を考えることを通して、今後の聴解研究に求められることをともに考えたいと思います。