◆ 日時: 2020年10月17日(土) 13:00-18:00
◆ 場所: オンライン(Zoom)
★ 参加申し込みが必要
◆申込みフォーム: https://forms.gle/96ZSY8HnFesekXWp8
申込締切日:
10月14日(水)
参加希望者多数の場合は募集締め切り日よりも早く応募を締め切る場合があります。
お申し込みいただいた方に、10月16日(金)にご記入いただいたメールアドレスに、研究会のZoomのID、PWと配布資料をお送りいたします。
◆ 参加費:無料
◆ プログラム
【開会の挨拶】13:00-13:05
【研究発表】13:05-16:15
1. 13:05-13:35
程寧(テイ ネイ) お茶の水女子大学 大学院生
「Behavioral
Profileアプローチからみた多義語の意味分析−移動動詞「あがる」を例に−」
2. 13:35-14:05
吉永尚(ヨシナガ ナオ) 園田学園女子大学 教授
「体感のオノマトペの語形と意味の相関」
3.
14:05-14:35
黄叢叢(コウ ソウソウ) 明治大学 大学院生
「日本語漢字表記和語の日中対照研究−「受ける」と『受』を例に−」
4.
14:45-15:15
河合智恵子(カワイ チエコ) フランス・オルレアン大学 非常勤講師
「フランス人中級日本語学習者による助詞の使用についての縦断的研究 −1年間の日本滞在が及ぼす影響とは」
5.
15:15-15:45
VOROBEVA
Galina(ヴォロビヨワ ガリーナ) 元キルギス共和国ビシケク国立大学 准教授
「非漢字圏日本語学習者の漢字学習の問題点と漢字指導を考える」
6.
15:45-16:15
呉梅(ゴ バイ) 明治大学 大学院生
「中国語を母語とする日本語学習者の和製英語の意味推測に関する研究−推測しにくい和製英語の特徴は何か−」
【講演】16:30-18:00
佐治伸郎先生(鎌倉女子大学)
「語意習得におけるインプットの量と質」
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◆要旨
【研究発表】
1. 程寧(テイ ネイ)
「Behavioral
Profileアプローチからみた多義語の意味分析−移動動詞「あがる」を例に−」
本研究ではBehavioral
Profile(以下、BP)アプローチを用いて「あがる」のプロトタイプの語義、語義分類、意味拡張を分析し、内省分析の結果を検証した。その結果、まず、プロトタイプの語義は、「上に移動(着点)」や「数量が増加」であると考えられるが、どちらがプロトタイプとは言い難い。プロトタイプの語義は、使用頻度とバリエーションの豊富さだけで容易に決めることは難しいということが明らかになった。そして、語義分類は概ね内省分析の結果と一致していたが、内省分析の語義に当てはまらなかった例文も存在していた。内省分析の語義を再定義し、新たな語義を追加すると考えられる。また、意味拡張について、内省分析とは一致しなかった意味拡張もあった。さらに、BPアプローチは、客観的な手法として「あがる」の内省分析の結果を概ね検証できるが、結果の一部に解釈しにくい意味拡張も存在していた。
2. 吉永尚(ヨシナガ ナオ)
「体感のオノマトペの語形と意味の相関」
オノマトペの語形と意味の関連については、先行研究でたびたび指摘されているが、多くは筆者の内省に基づいたものである。本発表では、痛覚などの体感を表わすオノマトペを対象に語末が撥音、促音のもの及び畳語タイプのものを取り上げて形態と意味の相関について検証する。日本語教育でオノマトペは難易度が高い分野とされてきたが、喫緊の課題である医療福祉人材の養成においては、使用頻度の高い体感のオノマトペの教育の必要性が注目されている。台湾の大学で日本語中上級クラスの日本語学習者各30名を対象に、オノマトペの語末音ごとの意味特徴を導入した後で個々の意味を教えたクラスと、導入せずに個々の意味だけを教えたクラスで、文意に合うオノマトペを選択させるテストを行った結果、意味の違いを導入したクラスの方で定着度が高かった。オノマトペの形態によって意味や機能を推し量ることができるようになる事は、日本語教育上有効である。
3. 黄叢叢(コウ ソウソウ)
「日本語漢字表記和語の日中対照研究−「受ける」と『受』を例に−」
日本語と中国語とで数多くの漢字が意味または使用上のズレがあるため、中国人日本語学習者にとって、母語の干渉により間違って理解し、産出する可能性がある。本稿は、パイロット分析として、文の述語の部分となる動詞、日中とも広く使われている同じ漢字表記「受ける」と『受』を対象に、それぞれの意味を分析し、どう相違しているのかを比較し、日本語教育に示唆を与えることを目的とする。両語の意味範疇を明らかにするために、日本語と中国語の辞書による意味記述、コーパスの用例を比較した。その結果、日本語の意味範疇が広く、日中で同じ意味もあれば、異なる意味もある。そのうち、日中で共通している意味は大半を占めている。また、「受ける」と『受』の基本義が異なり、意味拡張ルートも異なる。それぞれ独自の拡張ルートで、日本語では<好評を得る>のような自動詞化する用法が生まれ、中国語にも<我慢>のような自動詞的な用法まで拡張された。
4. 河合智恵子(カワイ チエコ)
「フランス人中級日本語学習者による助詞の使用についての縦断的研究 −1年間の日本滞在が及ぼす影響とは」
本研究は、フランスの大学で日本語学習をしているフランス人学生を対象に、1年間の日本留学をする前と後で、助詞の使い方がどのように変化・発達しているかを観察するものである。先行研究では、主に場所を表す「に」と「で」や、「は」と「が」の選別に誤答が多く見受けられるという結果が述べられているが、縦断的研究も、フランス人学習者を対象にしたものも少数である。上記の助詞の誤用は前置詞を母語にもつフランス人学習者にも多数見られるものである。このように習得困難とされている助詞はインプット・アウトプットがより頻繁に行われる目標言語の国に滞在することで正しく使われるようになるのか、そうであればどのような助詞の使用に上達が見られるのかなどを研究内容とし、穴埋め問題と助詞を選択した理由・説明を求めたメタ言語アンケートを資料とする。
5. VOROBEVA
Galina(ヴォロビヨワ ガリーナ)
「非漢字圏日本語学習者の漢字学習の問題点と漢字指導を考える」
本発表では、非漢字圏日本語学習者の漢字学習の問題点を分析し、より良い漢字学習法としての階層的なアプローチを紹介する。また、漢字の構成上の複雑性の感覚、漢字学習法についても検討する。階層的アプローチは、発表者自身の小学校で経験したキリル文字の指導法をもとに開発したものである。漢字を要素に分解し、画、片仮名、漢字字体の関連を明らかにし、教育プロセスにおける漢字のメンタルイメージの進化をもたらすアプローチである。このアプローチを使ったキルギスでの漢字教育の実践もあわせて報告する。漢字の構成上の複雑性の感覚については調査結果を紹介する。漢字学習法については、キルギスでの大学における「漢字学習法」という科目で実践した「字体と意味を覚える連想記憶法」、「字体と筆順を覚えるための唱えことば」、「マインドマップ」、「概念地図」、「漢字字体、意味、読み方、筆順などを覚える用のeラーニング」についても述べる。
6. 呉梅(ゴ バイ)
「中国語を母語とする日本語学習者の和製英語の意味推測に関する研究−推測しにくい和製英語の特徴は何か−」
本研究は,中国語を母語とするJFL の日本語学習者57 名を協力者に、意味推測テスト、日本語語彙テストおよびフォローアップインタビューを行い、「モデルルーム」のような複合語タイプの和製英語の意味推測について調査し分析したものである。調査対象語(全40 語)は、柴崎他(2007)等を参照しながら、調査協力者にとって未知の語を抽出した。ただし、原語の英語は既知となるよう前項語と後項語が中国の英語能力試験(CET4)に掲載された平易な語とした。今回、正答率0%であった11 語について分析、考察した。学習者にとって推測しにくい和製英語は以下のような特徴が見られた。(1)前項と後項の意味の総和が語全体の意味と異なる(例:オールバック)、(2)前項あるいは後項の意味が原語の英語とズレがある(例: キャッチコピー)(3)前項あるいは後項の語の意味が基本義でなく、学習者に馴染みがない(例: ニューハーフ)、(4)中国語の負の影響を受ける(例: マジックハンド)。
【講演】
佐治伸郎先生
「語意習得におけるインプットの量と質」
本発表では、第一言語習得および第二言語習得において、語意習得にかかわるインプットの効果を以下の二つの側面から議論する。第一に、インプットの量の問題である。これはインプットにおいてどれくらい多くの頻度でその語が与えられるかということが、意味の習得に効果を持つかという問題である。第二に、インプットの質の問題である。これは学習者に対して語が、どのような意味のばらつきを持って与えられるかということが、意味の習得にどのような影響をもたらすかという問題である。
本発表ではこの二つの要因に着目した複数の意味領域に対する実験、および第一言語習得と第二言語習得の学習者を対象とした実験を紹介する。その上でこれらの結果を一般化し、インプットの量とインプットの質がそれぞれ語意習得において異なる効果を持つという仮説を提唱する。
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