◆ 日時:
2020年06月13日(土) 13:00~16:20
◆ 場所: オンライン(Zoom)
◆ 事前申し込み必要:https://forms.gle/9SAFQKi6ruFPAQBV7
◆参加費:無料
◆ プログラム
【総会】13:00~13:10
【研究発表】13:10~15:10
1.13:10
王丹叶(オウ タンキョウ) お茶の水女子大学 大学院生
「述語動詞の意志性・無意志性からみる「ために」と「ように」の習得―中国語を母語とする日本語学習者を対象に―」
2.13:50
王舒茵 (オウ ジョイン) お茶の水女子大学 大学院生
「中国人日本語学習者の読解での付随的語彙学習におけるL1・L2語注の効果-L2習熟度・L1対訳の有無の影響に着目して-」
3.14:30
徐乃馨(ジョ ダイケイ) 首都大学東京 博士研究員
「中国語母語話者の名詞修飾使用の縦断的変化―LARP at SCUコーパスの分析結果から―」
【講演】15:20~16:20
王冲先生(中国大連理工大学)
「語彙カテゴリーの再構築―L2学習者はどのように語の概念を習得するか」
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◆要旨
【研究発表】
1.王丹叶(オウ タンキョウ)
「述語動詞の意志性・無意志性からみる「ために」と「ように」の習得―中国語を母語とする日本語学習者を対象に―」
本研究では、中国語を母語とする日本語学習者(CJL)と日本語母語話者(NS)を対象に、「ために」と「ように」に対する容認度、「ために」と「ように」に前接する述語動詞が意志動詞か無意志動詞かという意志性判断に対してテストを行い、両テストの関連性を分析した。
その結果、CJLの「ために」と「ように」に対する容認はNSとの間に差が見られたが、意志性判断においてNSとの間に差が見られなかった。また、「ために」と「ように」の容認と意志性判断の間に相関が見られなかった。そこで、CJLの「ために」と「ように」の誤りは述語動詞の意志性と無意志性の区別の可否と関連していないことが示唆された。
2.王舒茵 (オウ ジョイン)
「中国人日本語学習者の読解での付随的語彙学習におけるL1・L2語注の効果―L2習熟度・L1対訳の有無の影響に着目して―」
中国人初級・中級日本語学習者を対象に、読解での付随的語彙学習に対して、L1・L2語注の促進効果が見られるか、見られる場合、学習者のL2習熟度・目標語彙のL1対訳語の有無が影響を及ぼすかについて語彙知識の各側面の習得を測る7種のテストを用い、調査を行った。その結果、習得のレベルに違いはあるが、語彙知識の形式・意味・統語・アソシエーションの受容・産出面において、習得が見られた。また、L1・L2語注が目標語彙の意味面の習得を促進することができることと、初級学習者はL1語注しか利用できないが、中級学習者はL1・L2語注両方を利用できることが分かった。L1対訳の有無に関わらず、L1・L2語注が目標語彙の習得を促進したことが分かった。
3. 徐乃馨(ジョ ダイケイ)
「中国語母語話者の名詞修飾使用の縦断的変化―LARP at SCUコーパスの分析結果から―」
本研究は、中国語母語話者の日本語の名詞修飾の使用の変化を縦断的に調査し、初級からの発達段階を分析する。
調査の結果、初級では、名詞修飾の使用が非常に少ないが、学習期間が長くなるにつれ、名詞修飾の使用が増加することがわかった。そして、増加が見られたのは、LARP調査期間の後半から、つまり、大学三年前半からであることがわかった。
先行研究の結果と照らし合わせて考えると、中国語母語話者の初級から中級、そして上級にかけての変化が以下のように推測できる。初級では名詞修飾をほとんど使用しないが、中級になるにつれ、名詞修飾の使用が増加する。しかし、中級の中国語母語話者は同レベルの韓国語母語話者より、名詞修飾の使用が少ない。そして、中国語母語話者は、中級から上級にかけて名詞修飾の使用が顕著に増加し、韓国語母語話者の中級においての使用と同程度に達すると考えられる。
【講演】
王冲先生(中国大連理工大学)
「語彙カテゴリーの再構築―L2学習者はどのように語の概念を習得するか」
カテゴリー化は人間の認知能力の一つであり、我々は経験に基づき同じ語で命名できるものを同じカテゴリーに分類し、そして認識されたあらゆる外界をカテゴリーに整理していく。これまでの研究から、どのようなものをカテゴリーに含めるか、どのような基準でカテゴリーの境界線を引くのかなどの点において、各言語に相違が認められることが分かっている。例えば、一続きの物を分断する動作において、中国語では刃物の種類によって、細かく語を使い分けるのに対し、日本語ではほぼ「切る」を用いることができる。衣類などを着用する動作において、中国語では主要な衣類かどうかによって“穿”と“戴”を使い分けるが、日本語では、それに加えて、身体の部位などによって使い分けている。このような言語間の違いによって、L2学習者はL1の語彙カテゴリーとは別にL2 の語彙カテゴリーを再構築する必要がある。本講演では、L2学習者の語彙カテゴリーの再構築に関する研究を概観し、今後のこの分野における課題を考えたい。
【【研究発表】13:30-14:50
1.13:30-14:10
Garmaeva
Olga(ガルマーエヴァ オリガ) お茶の水女子大学 大学院生
「処理指導(Processing
Instruction)の効果-特性の異なる対象言語形式を対象に―」
2.14:10-14:50
林苗(リン ミョウ) 明海大学 大学院生
「JSL環境における中国語母語日本語学習者の会話コーパスに見る日本語指示詞「コ・ソ・ア」の習得-ダイクシスと照応を統合した枠組に基いて―」
【ご講演】15:00-16:00
鈴木伸子先生(同志社大学)
「日本企業における若手外国人社員の働きにくさとキャリア形成を考える」
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◆要旨
【研究発表】
1.Garmaeva Olga(ガルマーエヴァ オリガ)
「処理指導(Processing
Instruction)の効果-特性の異なる対象言語形式を対象に―」
B. VanPatten(1996)が提案した処理指導(Processing Instruction,以下PI)はインプットを構造化した活動によって言語形式への注意を促し,インテイクに働きかけをするという。PIの効果について多様な言語・言語形式・学習者を対象に研究が行われてきたが、その効果に様々な要素が関わっている指摘がある。そこで,本稿では対象言語形式が持つ特性の観点からPIの効果について検討するために,まず今までの実証研究で扱われた言語形式の特性と指導の効果との関係を示した。それから日本語の助数詞と動詞の語尾を対象に行ったPIがそれらの言語形式の理解・産出を促すかについて実証を行った。その結果,ロシア語を母語とする日本語学習者に対してPIが効果的な指導として認められたが,その効果に対象項目の難易度,ルールの複雑さなどが影響する可能性が示唆された。
2.林苗(リン ミョウ)
「JSL環境における中国語母語日本語学習者の会話コーパスに見る日本語指示詞「コ・ソ・ア」の習得-ダイクシスと照応を統合した枠組に基いて―」
複数の文が連続する間に「つながり」が生じ、その「つながり」の1つとしては文法的依存関係による「結束性」がある。その「結束性」を作り出す1つの標識が指示詞である(庵2007)。また、日本語文章・談話における意味の脈絡や文脈の展開機能を担うのが指示詞である(佐久間2002)。つまり、指示詞は談話における意思伝達の成功を担保する要素として貢献している。本研究では森塚(2002)のダイクシスと照応を統合した枠組みに基き、中上級中国語母語学習者を対象とし、指示詞「コソア」の習得実態を縦断に調査し、質的分析した。その結果、同一文脈における「その+名詞」と「そういう+名詞」を比べると、「つながり」という文脈展開機能は「その+名詞」のほうがより強い、また「その」と「そういう」の後続の連体修飾構造は「名詞」<「名詞+の+名詞」<「形容詞(イ/ナ)+名詞」<「動詞+名詞」のような文法的発達をする、ということが示唆された。
【ご講演】
鈴木伸子先生
「日本企業における若手外国人社員の働きにくさとキャリア形成を考える」
2018年12月、国会では異例のスピードで入管法の改正が決定され、今年4月から「特定技能」という在留資格がスタートしました。その過程で、日本における外国人労働者の受け入れをめぐってさまざまな論争が起きたことはみなさんの記憶にも新しいことと思います。しかし、日本は今回、初めて外国人労働力を受け入れたわけではありません。主に日本企業で働く高学歴の大卒・大学院卒の外国人は、既に1990年代から受け入れてきました。とりわけ、アジア諸国の経済成長が著しくなった2000年代以降には、就職する留学生も増えてきました。しかし、米国や豪州に比べると、高学歴外国人の流入数は圧倒的に少ないばかりか、ほぼ同じ規模で流出しているのが日本の現状です。そんな日本社会や企業の、どのような特徴が外国人社員の働きづらさに繋がっているのでしょうか。彼らは、職場の使用言語や独特の企業文化以外にも、日本型の雇用システムやジェンダーの問題など多くの障壁に直面しています。本講演では、8年間に及ぶ継続的なインタビューデータの分析から、外国人社員の働きにくさとそのキャリア形成の実際についてお話したいと思います。
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