第104回第2言語習得研究会(関東)

 日時: 2019年11月2日(土)  13:30~16:00


◆ 場所: お茶の水女子大学 本館 306室
★ 会場にご注意ください! *大学まで;http://www.ocha.ac.jp/common/image/access_map2.jpg

   土曜のため、正門(東門)しか開いていません。

   正門は春日通り沿いですので、最寄り駅は丸の内線の茗荷谷駅になります。

*学内マップ;http://www.ocha.ac.jp/help/campusmap_l.html#no1(1番の建物です)

 

◆ 事前申し込み:不要

 

参加費:2,000円 

 

◆ プログラム

【研究発表】13:30-14:50

 113:30-14:10

 Garmaeva Olga(ガルマーエヴァ オリガ) お茶の水女子大学 大学院生

 「処理指導(Processing Instruction)の効果-特性の異なる対象言語形式を対象に―」

 

 214:10-14:50

 林苗(リン ミョウ) 明海大学 大学院生

 「JSL環境における中国語母語日本語学習者の会話コーパスに見る日本語指示詞「コ・ソ・ア」の習得-ダイクシスと照応を統合した枠組に基いて―」

 

【ご講演】15:00-16:00

 鈴木伸子先生(同志社大学)

 「日本企業における若手外国人社員の働きにくさとキャリア形成を考える」

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要旨

【研究発表】

1Garmaeva Olga(ガルマーエヴァ オリガ) 

「処理指導(Processing Instruction)の効果-特性の異なる対象言語形式を対象に―」

 

B. VanPatten1996)が提案した処理指導(Processing Instruction,以下PIはインプットを構造化した活動によって言語形式への注意を促し,インテイクに働きかけをするという。PIの効果について多様な言語・言語形式・学習者を対象に研究が行われてきたが、その効果に様々な要素が関わっている指摘がある。そこで,本稿では対象言語形式が持つ特性の観点からPIの効果について検討するために,まず今までの実証研究で扱われた言語形式の特性と指導の効果との関係を示した。それから日本語の助数詞と動詞の語尾を対象に行ったPIがそれらの言語形式の理解・産出を促すかについて実証を行った。その結果,ロシア語を母語とする日本語学習者に対してPIが効果的な指導として認められたが,その効果に対象項目の難易度,ルールの複雑さなどが影響する可能性が示唆された。 

 

2.林苗(リン ミョウ)

JSL環境における中国語母語日本語学習者の会話コーパスに見る日本語指示詞「コ・ソ・ア」の習得-ダイクシスと照応を統合した枠組に基いて―」

 

複数の文が連続する間に「つながり」が生じ、その「つながり」の1つとしては文法的依存関係による「結束性」がある。その「結束性」を作り出す1つの標識が指示詞である(庵2007)。また、日本語文章・談話における意味の脈絡や文脈の展開機能を担うのが指示詞である(佐久間2002)。つまり、指示詞は談話における意思伝達の成功を担保する要素として貢献している。本研究では森塚(2002のダイクシスと照応を統合した枠組みに基き、中上級中国語母語学習者を対象とし、指示詞「コソア」の習得実態を縦断に調査し、質的分析した。その結果、同一文脈における「その+名詞」と「そういう+名詞」を比べると、「つながり」という文脈展開機能は「その+名詞」のほうがより強い、また「その」と「そういう」の後続の連体修飾構造は「名詞」<「名詞++名詞」<「形容詞(イ/ナ)+名詞」<「動詞+名詞」のような文法的発達をする、ということが示唆された。

 

【ご講演】

 鈴木伸子先生

日本企業における若手外国人社員の働きにくさとキャリア形成を考える」

 

201812月、国会では異例のスピードで入管法の改正が決定され、今年4月から「特定技能」という在留資格がスタートしました。その過程で、日本における外国人労働者の受け入れをめぐってさまざまな論争が起きたことはみなさんの記憶にも新しいことと思います。しかし、日本は今回、初めて外国人労働力を受け入れたわけではありません。主に日本企業で働く高学歴の大卒・大学院卒の外国人は、既に1990年代から受け入れてきました。とりわけ、アジア諸国の経済成長が著しくなった2000年代以降には、就職する留学生も増えてきました。しかし、米国や豪州に比べると、高学歴外国人の流入数は圧倒的に少ないばかりか、ほぼ同じ規模で流出しているのが日本の現状です。そんな日本社会や企業の、どのような特徴が外国人社員の働きづらさに繋がっているのでしょうか。彼らは、職場の使用言語や独特の企業文化以外にも、日本型の雇用システムやジェンダーの問題など多くの障壁に直面しています。本講演では、8年間に及ぶ継続的なインタビューデータの分析から、外国人社員の働きにくさとそのキャリア形成の実際についてお話したいと思います。